貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
「節度を拒むなら、結構。どうせ下劣な人間は、死んでも治らないんだろ。けど乙愛を……私の彼女を侮辱するなっ!」
呆気なく二人の仲間に痛手を負わされた少年少女らと同様、乙愛まで呆然としていると、やおら肩を抱き寄せられた。
「彼女」とは、二人称としてのそれか。
それとも、乙愛が夢にこそ想い描いても所詮は夢に過ぎないと終わらせていた、純との関係を示唆するそれか。
「……っ。あたし飽きてきた。ペンギン観に行こ?」
「えっ、早織?」
「だってそうじゃん。こんな暑苦しいとこに来て、わざわざ暑苦しい格好したお姫様見てたって、しんどいしぃ」
「言えてるー」
二人の少女達の興醒めが、他の一同にも伝染していく。
Tシャツを赤く濡らした少年も、折り重なって顔を歪めていた少年達も、士気をなくして白けていた。
「ふんっ……ゴスロリで同性愛者かよ」
「救いようがねぇなぁおい」
好き勝手に捨て台詞を吐いて、ぞろぞろと、少年少女達が自動ドアの向こうへ消えた。
もしや彼らは、工場で生まれたのではないか。
救いようがないのはどっちだ。
おかしいほどの無音が辺りを覆った。
純の目が、柔らかい。
彼女が見つめてくれる眼差しが、優しくて、乙愛の中で張りつめていたものがほぐれていく。
「純様……」
「乙愛」
目と目を交わして、乙愛は純と抱き締め合った。特別な言葉は必要ない。