貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
聖音、愛してる。
当たり前でしょっ……貴女じゃないと、いや。
君を、誰にも渡したくない。君を汚そうとする、あいつの目だって、許せなかった。
許さないで……許しては、いや。
白い首筋を啄ばんで、聖音をソファに押しつけた。
ヴェールを外して、ドレスのファスナーを下ろす。花嫁人形の上体が、ただの下着姿の少女になった。
下着を膨らませるみだりがましい二つの丘陵を揉みしだきながら、滑らかな肌をキスでなぞった。ほのかに血管を透かす白い鎖骨も、肩も、腕も、聖音はいつも甘い花の匂いがしていた。
彼女の高尚な中にも柔らかな温度を含んだ吐息が、純の色情を乱してゆく。
薄汚い男のために用意された生贄を、純は奪った。
もとより、彼女はあの男のものではない。
知り尽くした聖音の身体を貪って、濡れた熱を重ねて交わした。余裕をなくした呼び水が、聖音をいつにも増して燃え上がらせる。純は伝えても伝え足りない愛をささめく。
これから神前で誓いを立てる花嫁達。若い二人にひとひらの慚愧も容赦しないと言わんばかりに蛍光灯が威圧をかける下、純は聖音と一つになった。
どれだけ身体を重ねても、彼女の奥を、奥をと触れても、人間の肉体と肉体は融け合わない。
理不尽だ。
何故、自分は、人間らしく生まれなかったのだ。
人間らしく生まれていれば、彼女を、生き地獄から連れ出せたろうか。今日までただ鬱ぎ込むだけにとどまらないで、傲慢に、強欲に、ただ本能に従って、欲しいものを得るために、あの男を貶められたろうか。
美和聖音。
聖なる音色。
それは純の最初で最後の恋人だった。
それから間もなくのことだ。
ノックの音が、半裸の花嫁を蒼白にした。