貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
「何か……仰いました?」
凛とした甘い声に振り向くと、消え入りそうに白い少女が純を見ていた。髪を除く過半数が白い彼女は、今まさに二人の頭上を飾っている夜陰の真珠の色でも盗んできたようだ。
「何でもない。ってか敬語、何とかなんない?」
純は、乙愛との距離を詰める。
乙愛の手が、彼女のコテージの合い鍵を握っていた。
「あ……」
乙愛を白いビスケット扉に縫いとめた。指を捕らえて組み繋ぐ。細いそれは力なく、手首が微かに震えている。鍵の落ちる音がした。
「純様、鍵が」
「鍵じゃない、私は敬語を言ってるの」
「だって……」
「ついでに様付け、いらないし。乙愛は私のファンなわけ?」
「えっと、今日、までは」
「今日からは?」
「こ……」
「こ、何?」
「こ、こ、い──……」
乙愛はすぐに頬を染めて、黒目がちな双眸に潤沢を浮かべる。
世間の女子らが「神無月純」という歌い手にいだく心象は、あの水族館での一件を機に、乙愛の中で揺らいだはずだ。
上品ぶった口調に振る舞い。とりわけオーソドックスなロリィタファッションを好んでいる女が志す身性。それが純だ。
まさかそれが表現活動の一環で、更にはいわゆる営業ロリィタであるとは、誰が想像するだろう。
だのに乙愛は、変わらず純に傾倒的な眼差しを向ける。初々しい少女を彷彿とする目は、今朝も今も変わっていない。
「ふぇ、純、様……鍵……」
純が乙愛の首筋をなぞると、彼女の身体が微かにたわんだ。
本当に、泣かせそうだ。