貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
「純、様……」
純の頬に指を伸ばす。
乙愛を組み敷く半身は、羽根のように軽やかだ。
「本気になっちゃった……」
吐息が耳殻をくすぐった。同時に柔らかな唇が触れた。耳朶、首筋に、みだりがましいくすぐりが伝う。
肉叢という肉叢が、ひくひくと焦燥を訴える。声を上げたい切なさを抑えて、乙愛は自由な右手に拳を握る。
「あっ……んんぅ、純様ぁ」
けだし緩みきった乙愛の顔が、ただでさえ綺麗な純の目路に触れている。冷静になると情けない。
「電気……」
「消す?」
乙愛は頷く。
純が、まるで選択肢など用意していない顔で笑った。
「ダメ」
「っ……」
「私の可愛らしいお人形が、見えなくなるじゃん」
シャーリングのジャンパースカートの肩紐が、たわやかな指に奪われていった。その指先が、乙愛を隠すブラウスのボタンをはだきにかかる。
「あ、あたし……」
「乙愛を、もっと知りたいの」
花びらにくるんだ薄い肉が、頰に触れた。純の言葉が、キスが、乙愛の鬼胎に魔法をかける。
心許ない下着を覗く乙愛の素肌が、蛍光灯の光を浴びて、そして弾く。純の手がキャミソールの隙間を縫って、下腹を、脇を、胸を探る。
「はぁっ、ふ、ん……」
胸の膨らみを包んでいるのはワイヤー入りの人口素材。厚いようで薄いそれのすぐ向こうに確かな手のひらの重みを受けた膨らみは、乙愛の肢体を仰け反らせる。下着の留め金が外れると、たぷん、と、覊束をなくした乳房が麓に広がった。
「純様、あたし……変になっちゃう……」
「どんな貴女も大好きだ」
「っ……でも、あっ……」
この感覚を、人は快楽と呼ぶのだろう。怖くないと言えば嘘になる。されどそれに引きずり込まれる自分の痴態がどれだけ羞恥的か、その方が、乙愛には重大な問題だ。