貴女は私のお人形
第1章 あの人はあたしの神様で、
「おと姫、可愛ーい!お洋服ゴージャスねっ。ねっ?彼女なんですよぉ、すず姫が電車で逢ったお姫様!」
「ふぅん……確かに美しい。カチューシャやキャノティエが主流となってきたこのご時世に、ヘッドドレスを合わせているのも感心するわ」
「古き良き伝統というやつですよね。すず姫なんて、今日もリボンバレッタになっちゃったのよぉ」
「可憐なすずめにはリボンが似合うさ。一国の王女のティアラと同じ、すずめの錦糸同然の髪を美しく飾っているよ」
「リュウ様っ……。ねぇおと姫、純様はどんなお洋服なのかしらね?あっ。そうそう、里沙様も綺麗な人でしょ?」
美しい客人達は、すこぶる打ち解けていた。
すずめが「里沙様」と呼んだ女も、絵になる皇子スタイルを極めていた。黒のブラウスに、小さな百合十字のドットストライプが入ったグレーの上下。姉妹ブランドはロリィタの金字塔として名高い、格式あるメゾンのものだ。
「申し遅れました。私、野本里沙(のもとりさ)。本当に可憐なお嬢様ね。仲良くしていただける?」
「はいっ。文月乙愛です。よろしくお願いします」
落ち着いた大人の雰囲気がある、里沙はすずめとはまた違ったタイプの美人だ。
年も、見るに乙愛達より上だ。
胸ほどある先の軽い黒髪を一つにまとめたヘアスタイルは、この顔触れの中で最もくせがない。そこが彼女の清楚な魅力を引き立てていた。唇や頬の赤みを消したメイクの所為で、白い肌は、いっそ透き通るようでもある。一重の目許に人懐こい明るさが光る。