貴女は私のお人形
第1章 あの人はあたしの神様で、
「お綺麗ですね!」
「有り難う。妹には、姉妹なのに全く違うって言われるわ」
「妹さんがいらっしゃいますの?」
「ええ。本当は、彼女がこのイベントに参加する予定だったの。風邪をこじらせて、代わりに私が」
「妹さん残念でしたね。でも良いなぁ、お姉さん……」
「おと姫は一人っ子なの?」
「うん、そう。すず姫のところみたいに兄妹でお洒落して出かけたり、楽しそうって思うわ」
「楽しくてよぉ、じゃあ、おと姫もすずめのお姉様になっちゃえ」
「そうだな。まぁ合格だ。すずめには及ばんが、美しい俺と並んで歩くには問題ない」
「有り難う。あ、すず姫。リボン曲がってる」
地毛をカチューシャ風に編み込みしたすずめの髪にちょこんと乗った、水色のドットチュールが重ねてあるリボンを整えた。
「有り難う!お姉様!」
すずめとリュウ、里沙と歓談している内に、乙愛の緊張はほぐれていった。
『乙女の避暑』の参加資格を外れているリュウが、何故、同席しているのかは未だ解せない。それでも、どこかしら通じるところのある同志達との歓談は、些細な疑問も二の次になるほど楽しいものだ。
程なくして、いやに二の腕のしっかりとしたゴシックロリィタの女が現れた。
女は肩まである黒髪を巻いて、顔を真っ白に塗っている。腕に限らず、全体的に筋肉質だ。カラーコンタクトを使っているのか、瞳が青い。
ノゾミは、リュウの左隣の席に座った。
「よろしくお願いしまーす、レディ達。田中ノ・ゾ・ミ、です!五十五歳の、ニート三年生でーすっ。なんちって、いやーん」
ノゾミは両手に頬を挟むと、着席したまま腰を曲げた。