貴女は私のお人形
第7章 きっとそれは満たされたこと
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ノゾミの予想は的中した。
あずながグランプリに輝こうとは、乙愛と里沙も先見していた結果である。
日の入り方、再開されたお茶会はお開きとなった。
短いようで、長かった。話が盛り上がっていたからか、『乙女の避暑』最後のイベントだったからか、無言の名残惜しさが一同の足を遅らせた。
純があずなをフォトスタジオへ案内するのは午後七時だ。それまで僅かな時間がある。
乙愛は純の誘いを受けて、庭園に出た。
遠くに水車が見える、三日目のお茶会の会場となった英国風の庭園だ。
ここで乙愛は、あずなと初めてゆっくり話した。すずめとも、色んな話をした。純が初めて乙愛に話しかけたのも、ここだった。
鳥籠のオブジェも、薔薇の造花が巻きつく年季の入った木製の柵も、色とりどりの花が盛られた花壇も、四日前から変わっていない。
変化したのは、乙愛と、純の距離だ。
「乙愛の写真、欲しかったな」
純がベンチに腰を下ろした。乙愛も彼女の隣に倣う。
「あたしの写真なんて……」
「私は、貴女に一票入れたんだよ。白昼夢でも見てるのと思ったくらい、綺麗だったから」
純の腕が、乙愛の肩を抱き寄せる。
真っ白なドレスに身を包んだ純の柔肌が、衣服越しに乙愛を誘う。
息が苦しい。意識がどこかへ飛んでいってしまいかねない、幸せな眩暈が乙愛を襲う。
花のように優しい、さりとて甘すぎない香りが、乙愛に染み込む。
波打つ長い金髪は、ウィッグだと分かっていても、キスしたくなるほど彼女にしっくり馴染んでいた。
「お綺麗なのは、純様ですわ。あずなさんも、お綺麗でしたけれど……やはりあたしは、純様を」
「乙愛」
「……いなく、ならないで下さい」