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貴女は私のお人形

第8章 だから世界の色が消えても、


「翌週、乙愛ちゃんはまた来てくれました。リボンで飾ったポケット付きのボレロとスカート、それから、その週新作のブラウス。スカートは、確か、白地に白いドットが入ったジャガード生地です。どれも薔薇柄の綿レースを使っていて、ハロウィンが近かったので、ヘッドドレスだけはキャンディ柄のレースを使っていました」

「乙愛によく似合いそう」

「私もそう思います。…………それからほぼ毎週、乙愛ちゃんはドクイチゴでお買い物してくれてました。金曜日が多かったかな。掲示板にも書き込みしてくれて、それを見て安心してくれたお嬢様もいたみたいです。乙愛ちゃん以外のロリィタさんも、少しずつ、注文してくれるようになりました」


 乙愛は、さしあたりあずなの勝利の女神だった。

 腕にだけは自信があった。一方で、センスや人格が、実は並外れて劣っているのではないか。素人の足許にも及ばないのではないか。半ば躍起にドクイチゴを続けていたあずなを、そうした不安がつきまとっていた。誰にも明かせなかった不安が。

 乙愛との出逢いは、そんなあずなの転機となった。


「お客様が来てくれて、嬉しかった。作ったものを身につけてくれる人がいると、励みになるんですよね。愛情込めようって、思えます。今も昔も変わらない」

 そうだね、と、純が肯いた。

「中でも」

「──……」

「乙愛ちゃんは特別でした」

「…………」

「乙愛ちゃんは、私の特別」

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