貴女は私のお人形
第1章 あの人はあたしの神様で、
「──……」
ばらばらと盛られた錠剤が、薄幸を物語ったような容姿の少女の手の平の白をいっそう深めた。
傍らにいた金髪の少女が、紙袋からワインボトルとグラスを出した。
少女がボトルの栓を抜くと、澄んだ金色の液体から、風味の良い葡萄の匂いが風に舞った。
「シェリーね。ペドロ・ヒメネス?」
「正解。甘いの好きでしょ」
「ええ。だから私、貴女を一番愛しているわ」
乾杯、と、微笑み合う少女らの手が、グラスを鳴らした。
この世の全ての幸福が、少女達を祝福しているようだった。これ以上にない、満たされた愛が杯を交わす二人をとりまいていた。
「…──あの子を、私だと思って欲しいの」
「え……」
「あの子を貴女のお人形にして。…──あの子は、貴女のものだわ」
シェリーにか、それとも海の向こうから取り寄せた秘薬が、少女を酩酊させたのか。
グラスを片手に、錠剤を与え合う彼女らの会話は、どこか齟齬を起こしていた。
緑色の小瓶に透けていた白は、半分以下に減っていた。
また一粒、黒髪の少女が膝の上の小瓶の口からこぼれた錠剤を唇に含み、金髪の少女の口元に運ぶ。
また一粒、金髪の少女が傍らの小瓶から錠剤をつまんで、黒髪の少女の口元に運ぶ。…………