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貴女は私のお人形

第1章 あの人はあたしの神様で、








 食事が運ばれ始めると、タイムスケジュールに従って、自己紹介が始まった。


 トーションレースが三重にあしらわれた姫袖を、チキンのソテーで汚さないよう、乙愛は慎重にフォークとナイフを操る。

 初めに簡単なプロフィールを明かした純が話していた時は、食事も喉を通らないで、嚥下出来たところで口当たりも風味も分からなかったものだが、続いて澄花、すずめと順が回っていくにつれて、初対面の人間同士特有の緊張感もほどけていった。

 同じ皿に盛りつけてあるレモンハーブの効いたミニキャロットも、甘くて美味しい。


 鶏肉をまた一口、乙愛が味わっていると、長ったらしく紳士道を説いていたリュウがようやっと席に着いた。


「次はアタクシね。皆さん、ご機嫌よう。田中ノゾミでございます」


 頬に片手を添えたノゾミは、黒いフレアスカートを押さえながら起立した。


 その時だ。


「失礼。貴方達の余興はもう良いわ」


 それは肉声で聞くにはまだ慣れない、天から降ってくるような声だった。

 純の不快げな目が、ノゾミとリュウに向いていた。


 天使だ。


 自己紹介で、純は現在、四十二歳だと明言していた。
 澄花より年上であるというのが、乙愛にはにわかに信じ難い。ともすれば親子に見えるし、澄花に備わるべきだった潤沢が、否、地上に散布しているあまねく美が、純の精気に変換されてしまったのではないかとさえ思う。

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