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貴女は私のお人形

第2章 煌る場所にいるはずで、


* * * * * * *


 すずめは好きだ。

 出逢ってまる一日、彼女が人格者としても魅力を備えているのは既に理解したあとだが、一時間置きに兄からかかってくる電話、通話中のすずめの受け応えようは、百歩譲っても乙愛の方が赤面する。

 まるで恋人との電話だ。恋仲でも、もう少しは世間の視線にはにかむだろう。


 友人として、乙愛はすずめに助言してやるべきかも知れない。
 が、何せ知り合ったばかりの関係だ。乙愛自身、人間の行動における標準など知らないのだから、むやみに踏み入るにも気が引けた。
 




「おと姫!すず姫達一番乗りよっ」


 今朝以来の英国風庭園に帰り着くと、すずめが嬉しげに声を上げた。

 たった今まで甘く切ない声を出して、携帯電話を耳に当てていた少女と同一人物とは信じ難い、果実のようなはしゃぎっぷりだ。


 二人の他に、確かに、誰もいなかった。

 今朝と変わらない風景だ。

 変わったのは青と緑の色彩。眩しかった陽は傾いて、穏やかな白みが降りていた。日常を隔たり離れた庭園を、夕方の空が影を落とす。…………



「豪華賞品、いただけるのかしら」

「それはそうでしょ。おと姫とすず姫の勝ちだもの!」

「何だか信じられないわ」

「ビンゴとか、おと姫は最後まで残るタイプ?」

「ええ」

「なるほど。それじゃあネガ思考になっても、無理ないわね」



 まもなくして、澄花とノゾミが到着した。

 澄花の涼しい顔に対して、ノゾミは駆使された雑巾よろしく疲弊していた。自称自宅警備員のノゾミは、身体を動かし慣れていないのかも知れない。

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