貴女は私のお人形
第2章 煌る場所にいるはずで、
鳴り止まない蝉の声は、どこから聞こえてくるのだろう。
オリエンテーリングの終了予定時刻は、午後六時。
三十分を回っても、戻った顔触れは里沙達が最後だった。
「湖畔様と純はまだ?」
「はい、お見えになっていません。携帯電話に連絡はとれないんですか?」
すずめが問うと、澄花が苦虫を噛み潰したような逡巡を挟んで首を振った。
「純も私も、充電器を持って来なかったのです。お恥ずかしい話ですが……。今朝、携帯電話を使えなくなりました」
「忘れてきたのか。主催としてどうなのだ?」
「リュウ様!」
「困ったわぁ……。純ちゃんもあずなちゃんも、方向音痴なのでしょう?犬のお巡りさんにお願いしなくては、帰ってこられないのではないかしら」
物憂げな表情も絵になる里沙の後方で、ノゾミもしおらしく眉を下げている。
乙愛も例にもれない。
純だけならまだしも、澄花の携帯電話まで使えないとなれば、分が悪い。一緒にいるはずのあずなの連絡先が登録されているのも、彼女の携帯電話だけだ。
「仕方あるまい。探しに行こう」
彼の腕で抱き枕もどきになっていたすずめが顔を上げた。
カラフルで淡い甘ロリィタのドールの目に、驚愕の色が現れている。
「どうした、姫。レディ達まで」
「いえっ。だって……ねぇ?」
「リュウ王子がすずめ姫以外を気遣うなんて、珍しいなって、ノゾミ思ったの」
黒髪のゴシックロリィタの男が、皆の気持ちを代弁すると、可愛らしく腰を曲げた。
「俺は紳士だ。全世界の女性に尽くしているつもりだぞ」