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貴女は私のお人形

第2章 煌る場所にいるはずで、


* * * * * * *


 オリエンテーリングの課題も残り僅かになったところで、純は迷った。

 言い換えれば、あずなとはぐれたのである。


 村の小さなお化け屋敷。

 都会のアトラクションとは違って、室内での移動手段は自分の足だ。
 ここでの課題は、出口にあるろくろ首をデッサンすること。施設内のトリックと同じく、いかにもわざとらしい出来栄えのものだ。


 初め、純はあずなと並んで入り口を抜けた。
 頭上を踊るコンニャクや、井戸から這い出るゾンビが二人をからかう中、それらは巧い具合に客を順路へ誘導していた。ところが、あずなが途中でこの類のものは不得手だと言い出して、純が一歩前を歩くことになった。


 作り物に、何故、恐怖心をいだけるのか。


 素直に怖がるあずなを理解しかねながらも、純はとにかく前へ進んだ。


 一本道のお化け屋敷で、まさか迷うまいとたかをくくっていた。


 たかをくくっていたくせに、気が付けばあずながいなくなっていた。


 かれこれ一時間以上は経過している。

 バッテリーの切れた携帯電話は、正確な時刻も知らせない。
 歩き疲れた足と、くたびれてきた気力だけが、純に時の経過を知らせる。



 つと、仮装した従業員ではない、第三者的な気配が息差した。


「湖畔さん……っ?」


 作り物の草木の向こうに、ぼんやり白い影が見えた。


 あずなではない。


「…………」


 純に、白い影の正体が、お化け屋敷を目当てに訪った客ではない予感が襲う。


 普通の人間にしては、影はあまりに白いのだ。



 一歩、一歩と影に距離を詰めてゆく。

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