貴女は私のお人形
第2章 煌る場所にいるはずで、
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オリエンテーリングの課題も残り僅かになったところで、純は迷った。
言い換えれば、あずなとはぐれたのである。
村の小さなお化け屋敷。
都会のアトラクションとは違って、室内での移動手段は自分の足だ。
ここでの課題は、出口にあるろくろ首をデッサンすること。施設内のトリックと同じく、いかにもわざとらしい出来栄えのものだ。
初め、純はあずなと並んで入り口を抜けた。
頭上を踊るコンニャクや、井戸から這い出るゾンビが二人をからかう中、それらは巧い具合に客を順路へ誘導していた。ところが、あずなが途中でこの類のものは不得手だと言い出して、純が一歩前を歩くことになった。
作り物に、何故、恐怖心をいだけるのか。
素直に怖がるあずなを理解しかねながらも、純はとにかく前へ進んだ。
一本道のお化け屋敷で、まさか迷うまいとたかをくくっていた。
たかをくくっていたくせに、気が付けばあずながいなくなっていた。
かれこれ一時間以上は経過している。
バッテリーの切れた携帯電話は、正確な時刻も知らせない。
歩き疲れた足と、くたびれてきた気力だけが、純に時の経過を知らせる。
つと、仮装した従業員ではない、第三者的な気配が息差した。
「湖畔さん……っ?」
作り物の草木の向こうに、ぼんやり白い影が見えた。
あずなではない。
「…………」
純に、白い影の正体が、お化け屋敷を目当てに訪った客ではない予感が襲う。
普通の人間にしては、影はあまりに白いのだ。
一歩、一歩と影に距離を詰めてゆく。