貴女は私のお人形
第2章 煌る場所にいるはずで、
心霊やらゴーストやらの概念が、純にはない。
白い影は、近づくにつれて人間の輪郭を描いていった。足もある。
純の不信心は間違ってはいなかった。
「あの」
道案内だけでも頼めれば良い。
純は白装束の他人に声をかけるや、言葉をなくした。
目前の問題を切り出すまでに、思考が動悸にさらわれたのだ。
「さ……さと……」
そんなことはありえない。
ありえないのに、白いシルエットの人間は、純のよく知るとある少女に酷似していた。
さらさらと流れる姫カットの黒髪に、あどけなさの残った頬の輪郭。暗がりで視界は覚束なくても、肌に伝わるやおら強い眼差しから、大きな硝子玉のごとく双眸の持ち主だと分かる。背丈は、純より林檎二個分ほど低い。
心臓が嫌な音を立てていた。
総身の血液という血液が、正常な循環を失念して痙攣している。純自身の戦慄が、その意識を切り離そうとする。
会えた。
彼女に、──……
彼女にまた会えるなら、何を失っても構わなかった。
どんな罪を犯しても、どんな代償を払っても、純は世界で一番幸せになれると信じて疑わなかった。
「さ……」
唇は怯えながら動いても、声が出ない。
彼女に触れたい。
触れて、温もりを確かめ合いたい。
「会いたかった……!」
白い少女に腕を伸ばした。白い彼女を抱き締めた。