貴女は私のお人形
第2章 煌る場所にいるはずで、
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オリエンテーリングの戦利品をコテージに置いて、乙愛はあずなの招待を受けた。里沙も一緒だ。
「適当にかけててね」
部屋は、辛うじて足の踏み場が見つかる程度だ。肩を縮めていたのは乙愛だけに限るまい。
片付ける努力の痕跡はある。洋服やらレースやらリボンやらは壁際に寄せてあった。ソファも、今しがたのあずなの配慮に応えられるくらいには空いている。
一週間という滞在期間を差し引いても、見事に物の山である。洋服や小物は論をまたず、切りっぱなしの布切れや、ビーズの入ったケースまで散在していた。
「お待ちどう!」
カウンター風キッチンから戻ったあずなの手許から、カモミールが香っていた。トレイに並んだのはハーブティー。
優しい味と香りを楽しんでいると、続いて焼き野菜とサラダが運ばれてきた。
『乙女の避暑』は、プランに食事は入っていない。
今朝は一人朝餉をとった乙愛にとって、あずなの誘いは有り難かった。
「湖畔さんって、お料理上手なんですね」
「手先が器用なのね。乙愛さんのお洋服だって、あずなの手作りでしょう?」
「誉めたって笑顔しか出せないよー」
もっとも、それから味噌汁とおむすび、続いて新しいハーブティーが出てきた。今度はローズヒップと蜂蜜のアイスティーらしい。
「はい、里沙。乙愛ちゃん、お箸」
あずなが割り箸を一本ずつと、取り皿を配膳していった。