貴女は私のお人形
第2章 煌る場所にいるはずで、
「乙愛ちゃん。乙愛ちゃーん?」
にわかに羊毛フェルトの小さなウサギが、乙愛の視界に飛び込んだ。
昨日もあずなの手首を彩っていたブレスレットのチャームが、揺れている。
「あ、気付いた?」
頷いて、乙愛は食べかけのおむすびを頬張る。
「やっぱり、ショック?」
「ショックでも、乙愛さん言えないんじゃないかしら」
里沙の助け舟が、乙愛の逡巡を埋め合わせた。
「あの格好良い神無月さんが、お化けが怖くて泣いたのよ。そっとしておいてあげましょう」
「うん。乙愛ちゃん、神無月さん命だもんね……私とは違う」
「あずなはお化けが怖くても、なんかそういうイメージだものね」
「どういう意味それぇっ」
詮索を免れたのは幸いとして、里沙とあずなは、あられもない誤解をしているようだ。
里沙とあずなが合流したのは、乙愛も純も通常の距離を取り戻してまもなくのことだ。
純に関することでなければ、里沙とあずなに、乙愛は今すぐにでもあの終始を打ち明けたい。
一緒に過ごして、分かった。
あずなは里沙が好きだ。
それなのに、あずなは乙愛を心配して、お邪魔虫まで気にかけてくれた。
「あたし、元気出そうです」
皇子スタイルの里沙の頭に、あずなが桜の造花が盛りつけてあるリボンをあてがう。黒とサーモンピンクというちぐはぐが、却って愛らしい印象を生む。
仕返しとばかりに、里沙があずなのエプロンドレスに、青い薔薇のコサージュを合わせた。