貴女は私のお人形
第1章 あの人はあたしの神様で、
屈従の中でしか 息をつけないセカイ
君は 滑稽だと無邪気に笑う
安息に縋る 無様にしがみつく ヒトガタ
君の泪が 君を濡らす 哀れんで
歪んだ絵を視る無知な瞳が
本当は一番歪曲なのだと
君は君を嘲笑っていたね?
汚れた細工を諦観する目は
逃避という行動を
頑なに拒み続けている
君の肢体を護るシフォン
それは虚飾 鎧
荊道を歩く君の小さな足は
ストラップシューズを外せば靴ずれに喘いで
顔をしかめる君は綺麗で
君は久遠に消えない傷痕を
勲章のように抱き締めて
フリルの下に 君は
どれほどの闇を隠し持っている?
ドールにはなれない 君に
そのカラダは重たすぎたんだ
酷愛と痛みに震える純の声は、時に脆く、不安定だ。そのくせ少しも揺らぎがない。毅然としている。
緩やかな風に吹かれる稲穂を窓の向こうに目を遣りながら、乙愛の胸に熱がしみる。
遠くに見える家々は、ミニチュアのように小さく見える。別世界にでも来たようだ。
事実、乙愛は今、旅の空の下にいる。
こうも長閑な土地に住めば、自然と一体化出来たりするのか。穏やかだ。もっともこんな片田舎では、ロリィタとして生きづらいと聞く。父親の故郷を思い出しても、それは一概に迷信とは言い難い。
シェルの刺繍の入った白いレースが、スクエアカットのワンピースを夏らしくデコレーションするワンピース。パフスリーブに大きなリボンのあしらってある、総レースの白いボレロ。
お気に入りのワードローブの着心地が、肌に染み透る。
そしてお気に入りの純の歌『ドールの恋人』に耳を傾けながら、乙愛は晴れやかな景色を眺め続けた。