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貴女は私のお人形

第3章 貴女をあたしは知らなさすぎて、




 すずめが生まれた瞬間から、リュウの全ては、彼女のひとひらだ。



 最初で最後の恋人は、同じ姓の妹だった。



 わざわざ籍を入れるまでもない。生まれた瞬間、すずめとは運命で結ばれていた。



 すずめに病巣が見つかったは、彼女が生まれてまもなくのことだ。出産時に落命した母親に、同じ持病があったらしい。

 薬で進行は遅らせられる。治療次第で三十年は生きられる。

 すずめが物心つかなかった頃、リュウと父親が医師に言い渡されたことだ。

 国会議員の父親は、すずめの医療費に糸目をつけない。
 闇医者でも腕さえあればと、世界中を探したらしい。最終的に見つかったのは、延命治療に長けた医師だ。


  
 すずめと、あとどれほどの時間を、一緒に過ごせる?


 リュウはすずめと、あとどれだけの思い出を、一緒に重ねてゆけるのか。…………





「リュウ様?」

「何でもない。身体は?」

「平気。お茶会が始まってしまうわ。行こう、リュウ様」

「いや、だがすずめ」

「約束でしょ」


 アルパカの抱き枕を抱えたすずめが、立ち上がる。


 リュウは花壇を立ち上がって、すずめの後を追いかける。


 すずめの肩より長いピンク色の混じった亜麻色の巻き毛が、風に揺れる。


 最愛の妹が、妖精の魔力にさらわれたとする。リュウは、取り残されてしまうのか。


 得も言われぬ気持ちに駆り立てられる。

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