貴女は私のお人形
第3章 貴女をあたしは知らなさすぎて、
「姫」
どうすべきか分からない。
ただ一緒にいたいだけ。何故一緒にいられないのだ。
誰もが当たり前に得られるはずだった未来が、何故、リュウとすずめだけに許されない。
「怖い、姫……」
体裁も何も構わない、リュウの口からこぼれ出る弱音を、すずめの唇が受け止めた。
もつれる二つのシルエットは、二日前に見知ったばかりの兄妹だ。
他の可能性を探ろうとしても、純が至るのは最悪の真相。
お茶会の会場である中庭は、あの花壇を通るより他にないというのにである。
野原すずめと、兄のリュウ。
一昨日の晩餐から、違和感はあった。睦まやかな兄妹の度を、彼らはとっくに超えていた。
そして背徳の行為を貪る二人は、今、陽の光も畏れていない。
「ん、はぁっ……リュウ様……!」
純に彼らを否定するつもりはなかったが、生理的嫌悪感には抗えない。
胸の痛みに身体中の神経が冒されそうになりながら、純の足場が歪む。
やむなく木陰に背を預けて、彼らの集合時間まで待つことにした。