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貴女は私のお人形

第1章 あの人はあたしの神様で、



「貴女は?」

「え」

「名前。ついでにその真っ白ーいドレスのブランドはどこ?」

「あ、えと、文月乙愛。二十歳で大学生。このドレスは、ドクイチゴさんでお迎えしたわ。その……ロリィタ界のカリスマ、神無月純様に憧れて」

「ふんふん。なるほど。じゃあ、ひょっとしなくてもおと姫も『乙女の避暑』に行くの?」


  
 『乙女の避暑』とは、純が主催の宿泊ツアーだ。

 それまでファンとの接触を最小限にとどめていたようだった彼女が、いかなる心境の変化からか、極端に距離の狭まる企画を立てた。ただ、彼女のオフィシャルサイトで二ヶ月前、告知があって、過酷な人数制限もあった。
 乙愛は応募した。
 ライブの参戦権に連敗していた乙愛は、参加人数六人という、宝くじよりも厳しい可能性に賭けてみたのだ。結果、見事に当選した。



「すずめさんも?」

「もちろん。すず姫で良いわよぉ。おと姫の言う通り、純様って、確かに真っ白なゴシックロリィタさんって明言なさっているものね。憧れなら白、着るわよね」

「本当にカリスマかどうかは怪しいが……。純って女はゴシックだろう。乙嬢はほわほわではないか」

「リュウさん……?」

「あっ、ごめんね、おと姫。リュウ様は自分以外の美形が嫌いなの」

「ライブ、二人は行ったことがあるの?」

「いいえ。リュウ様は雑誌の編集部に勤めていてね、上司の人が、過去に純様に取材をお願いして断られたの。純様って、あれだけ人気なのに、固定のスタッフさんは妹さんだけ。フリーで活躍しておいでなのに、広告会社にもほとんど頼らないで、オフィシャルサイト以外情報発信なさらないじゃない。編集部じゃちょっとだけ、隠し撮り写真があるそうだけれど。勝手に公開も出来な」

「すずめ」

「あっ……。こ、これは企業秘密ね!おと姫」



 それにしても、何故、男子禁制の『乙女の避暑』にすずめの兄まで同伴しているのか。

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