貴女は私のお人形
第1章 あの人はあたしの神様で、
「あの、ところでリュウさんは、どこまですず姫とご一緒に?」
「よくぞ訊いてくれたな、乙嬢。地獄までだ。否、すずめは地獄に行けないから、火の中水の中、ヴェルサイユ宮殿までだ」
そう言って長い前髪をかき上げる、リュウの顔も口調も神妙だ。おどけている風ではない。
それからまもなく、宿泊施設『パペットフォレスト』の看板が見えた。『乙女の避暑』の開催地である。
神様に──…純に、逢える。
まだ見ぬ女性(ひと)の面影を想い、乙愛の胸は切なく締まった。
* * * * * * *
『パペットフォレスト』は、人里離れた高地にある。
駅からおよそ三十分ほどの道中、渓谷と歩道を頑丈な柵が隔てていたにも関わらず、リュウはすずめに山側を歩かせ、しっかりと腰に腕を回していた。すずめはリュウの肩にもたれて、終始、少女特有の愛らしさを発揮していた。乙愛は目の遣り場にたゆたう内、次第に、本当に兄妹だろうか、ついには疑心が芽生え始めた。
『パペットフォレスト』の本館、エントランスの自動ドアが開くと、小綺麗な身なりの係員が乙女達を迎えた。