貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
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カフェ『フェアリーガーデン』は、その名の通り、妖精達がのべつ人間らの目を逃れて遊んでいよう空想がかき立てられるだけの見晴らしがある。
その、かしこまりすぎずカジュアルすぎない店内を照らすガラス張りの窓際に、乙愛とすずめは向かい合っていた。
「私、おと姫が理解出来ないわ」
眉をしかめるすずめの手前に、瀟洒な朝餉が盛りつけてあった。耐熱ガラスのティーセットは、ほど良く熱の引いたフランボワーズのフレーバーに色づいている。爽やかな紅茶のとり合わせは、バターと苺のコンフィチュールでたっぷりめかしこんだパンケーキ。
甘いものを口にして、朝陽を弾く白いプレートの面積が広がっていっても、すずめの口舌は糖質を得ない。
「だって、じゃないわ。純様からデュエットに誘われて、断ったって?ふざけるんじゃないわよ」
すずめは、昨夜体調を崩したのが嘘に見えるほど顔色も良い。
明け方近くまでカラオケルームにいて、あのあとも何度か純の誘いを辞退した。そして最後には、月のものが降りている所以に腹筋が辛いと偽ったところまでを乙愛がすずめに話して以来、この愛らしい友人からは、叱咤しか出なくなったのである。
「はぁ……。せっかく、おと姫のことが気になって気になって仕方のない純様が、デュエットに誘って下さったのに。普通、断る?」
「だって……」
「里沙様とあずな姫みたいに、おと姫だって、純様と進展したかも知れないのに」
「あ、里沙さん達はね、歌っている時だけで」
「おと姫達は分かんないでしょ?!」
「…………」