貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
「三十一」
「三十一です!三十一!!」
純と澄花の温度差は、相変わらずだ。ゲームが始まってはや一時間、ルーレットを回して淡々と数字を読み上げる純とはよそに、とうとうノゾミまでゲームを上がってカードと睨み合うのが残るところ二人になっても、澄花の司会進行は熱が入っている。
「ねぇ」
純と澄花が読み上げた数字に、またしても肩を落としたあずなの斜め後方で、ノゾミが乙愛達にささめきかけた。
「リュウ王子は?」
「あっリュウさんは──」
「帰ったんでしょ」
今のすずめにその名は禁句だ。
されど何も知らないノゾミに罪はない。すずめに代わって説明しようと口を開きかけた乙愛の息を、あずなの声が遮った。
乙愛が前方を見ると、あずなは、不機嫌に眉をひそめていた。
「場違いだって、気が付いたのよ。そもそも、何で『乙女の避暑』に、乙女じゃなくて野郎が参加したんだか」
「あずなさん!」
もちろん、乙愛はあずなに同感していた。
しかしながら、すずめの前で、あずなの発言は過激すぎる。
乙愛には、すずめの前で、リュウを咎めることが出来ない。
「すずめちゃんに、優しいのね」
久しくビンゴカードに穴を空けながら、あずなが苦笑した。
「え?」
「乙愛ちゃん。すずめちゃんのためなら、あの男だって庇うでしょ」
「分かりません……」