貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
「えっと……」
純の困憊した息差しが、乙愛の胸を甘くくすぐる。
「有り難う、と、お伝え下さい。野本さん」
「はい」
「そうね……。妹さんは、黒いゴシックロリィタの女性だったかしら?里沙さんと似て、お綺麗なのでしょうね」
純は誰を誉め称えても、乙愛の耳には社交辞令として聞こえる。
里沙は人並みに綺麗だ。綺麗だが、乙愛の目には、純よりまばゆく映えるものがないからだ。
とりとめない乙愛の思考に並行して、『乙女の悩み相談室』は進行してゆく。
「ご縁があって、何らかのかたちで私を知って、共感して下さる皆を、心から愛しているわ。特に、今はライブね……直接彼女達とお会い出来る場を持てたあとは、出逢った一人一人の顔が浮かんで、眠れない。交わした言葉が、想いが胸を満たして、睡眠の妨げになるの。彼女達に、可能なら、一人一人にお礼を言いたいくらい。それに、女性は皆、それぞれに美しいところのあるものだけれど、中でも私好みのお嬢様なら……お茶でもしない、なんてお誘いしたくなるほどだわ」
ティールームの隅に控えていた澄花が、くすりと笑った。
純の誘いを受けられるようなサプライズがあるとすれば、乙愛なら卒倒しかねない。
もっとも、それは冗談だ。
フリルレースの幾重にも重ねる姫袖から伸びた透き通るような繊手が、錦糸のごとく金髪を、優美に払った。