貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
ノゾミが拳をテーブルに打ちつけた。
相談に乗ってもらう立場にいながら、さっきから、ノゾミはとてつもなく高圧的だ。
純の指南は厳しいが、乙愛も同感する。
孤独になるか、肉体だけを機能させたまま息絶えるか。
それらどちらにも耐えられないで、不平不満だけこぼされても、救いようがないというものだ。
純様は、されるだけのことはされたわ……。
「田中さん」
不意に、純の声音がやわらいだ。
「この世に、本当に絶望と言えるものは、ないと思うの」
「え」
「例えばよ。田舎にいるたった一人の友人に、あるいは家族に会った時、田中さんはどんな顔をする?」
「どうって……いきなり怒ったりはしないわよ。泣いたりもしない。嬉し涙は、まぁ……たまに」
つと、乙愛の視界に触れたあずなが、瞠目した。
純の言わんとしていることが、あずなには理解出来たのか。
「綺麗なお洋服を身にまとった時、どんな気分?」
「素敵な気分よ」
ノゾミが、今度はしかと純に答えた。
「だったら、貴方は大丈夫」
「──……」
「些細なときめきでも、素直に感じられる心があるなら、貴方はちゃんと生きている。希望を持てる。だって、小さな喜びを集めながら、毎日を過ごしたとしてよ。知らない内に蓄積して、大きな栄養になっているかも知れないじゃない」
「純ちゃん……」
「それにね」
ふっと純が、ノゾミではない、どこか遠くを見つめた。