貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
「純ちゃん」
彼女を呼んだノゾミの目が、鮮やかな生気に潤っていた。
「貴女、ただの人形じゃなかったのね」
「ご想像にお任せするわ」
満足そうに微笑んで、否、口元をニヤつかせて、ノゾミが椅子に腰を下ろした。
「続いて、野原リュウさんのご相談になる予定でしたが」
書類をめくりながら、純がテーブル席を見回した。
「事情により辞退されましたので、残るは文月さんのご相談のみとなりました」
乙愛の目と、純のそれが交わった。
何かを含めたような無音が流れる。純が、また息を吸った気配がした。
「本来、この場で回答したいところなのだけれど……」
いつまでも聞いていたいはずの純の声が、今は、耳を苛む。
出来ることなら、このまま時間が止まれば良い。
乙愛の心臓のざわつきが、焦燥と羞恥を訴える。
「実は、文月さんから頂いたご相談に関して、まだ答えを出せていません」
えっ…………?
「今回、このような失礼をしてしまったお詫びも兼ねて、文月さんをお茶にお誘いしたいの。二人きりでお話し出来るところへ」
え…………?
「それでは不公平かしら。異議のあるお嬢様がおいでなら、どうぞ仰って」
状況をのみ込めない乙愛も意に介さないで、話はひとりでに進む。
さっき、こうした果報を得たとすれば、卒倒しようと想像していたばかりなのに。
「異議なし!神無月さん、乙愛ちゃんを、たっぷり愛でてあげて下さい」
あずなの、いやに力のこもった同意が上がった。
「すず姫も異議はありません。おと姫もオーケーだそうですわ」
すずめを始め、里沙とノゾミも異議を申し立てる気配はない。
「お姉様……」
澄花だけが、神妙な顔つきを純に向けた。