貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
「お父様に手紙を書いたの。今日中に投函したいんだけれど、忘れちゃってて」
「明日帰るなら、……。手渡しは無理なの?」
そこまで口にして、はたとした。
すずめのたぐいないかんばせが、切実な色に翳っていたのだ。
「お願い!すず姫の代わりに本館に戻って、売店にあるポストに、これを投函してきて欲しいの」
「そんな……大事なものなんでしょ?」
「おと姫は、信頼出来るもの。それにすず姫、ちょっと、調子が良くないみたい」
「──……」
「コテージに戻るのに、体力、ぎりぎりかも。ごめん。変なこと頼んで」
乙愛は、すずめから封筒を受け取った。
「すず姫、待っててくれる?」
「え……」
「体調が悪いなら、部屋まで一緒に帰りましょう」
ここからコテージのある『パペットゾーン』に戻るには、森を抜ける必要がある。
ただでさえ夜が近い今、視界も暗い。歩道は整備されているが、乙愛はすずめを一人で歩かせられない。
「分かった」
すずめが、にこりと笑った。
「お礼、先に渡しておくわ」
ビンゴ大会で獲得した二位の景品である日傘と、マーガレットの造花が付いたストローバッグを腕にかけた乙愛に、もう一つ荷物が押しつけられた。
『Saint melody』と印刷してある、紙袋だ。
「驚いた?」
戸惑う乙愛をものともしないで、すずめは涼しい顔をしている。