貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
庭園を過ぎると、すずめは薔薇園を右手に歩く。
得体の知れない引力が、すずめを『パペットフォレスト』の未知なる区域へいざなう。
『この先の進入を禁ず』
表札の文字に従うつもりは毛頭ない。
茂みを分けて、木々の間をもっぱら進む。
気持ちが逸る。
この先に待っているものが、人の世にあるまじきものだとしても、すずめにとって、それは奇跡に等しいものだ。
待って焦がれて、ようやく、夢にまで見たときを迎えられる。
湖が見えた。
昨夜、夢にまみえた女が言った通りだ。
にわかに甘い匂いがした。それはすずめの皮膚に電流をもたらした。
「来てくれたんだ」
この世のものではないような抱擁。誘惑的に甘い温度が、すずめを捕らえた。
すずめの背を、みだりがましい乳房がそそる。ただでさえ危うかった心臓が、いやが上にせわしなくなる。
「可愛らしい……お人形さん。ごめんね?貴女を許してあげられなくて」
耳に心地好い声だ。
これから殺されるかも知れない時に、恐怖心すら奪われてゆく。