貴女は私のお人形
第4章 それでも、どんな真実があったとしても、
「やめ、て……すず姫には、リュウ様が」
首筋に女の唇が触れる。ブラウスのボタンが外れてゆく。
すずめのはだけた襟元は、女の繊手の侵入を許す。
鼓動に顫えるすずめの鎖骨を、絹のようにしなやかで、媚薬のように悩ましげな指先が遊ぶ。
女はすずめの下着の上から敏感な場所を探り当てた。愛でて、焦らすようでもある動き。
愛撫が下腹から太股の線をなぞった。パニエを仕込んだジャンパースカートが隔てているのに、すずめが身体をたわませるのには十分すぎた。
「んっ、ふ……」
それほど力があるようには感じられない。この女なら、すずめにでも突き飛ばせよう。だのにすずめは、弱々しく身じろぐだけだ。
「やめてぇぇ……っっ」
すずめの敵は、女ではない。背徳を招く衝動だ。
犯されても良い。
犯されたい?
リュウを殺めて彼と同じ末路をすずめに与えんとしている妖精は、獲物を懐柔するだけの魔力があった。
「すず姫は、リュウ様のものよ」
毅然と言い放った瞬間だ。
チク…………
すずめの胸に、何かが刺さった。
……あ…………、
これで、すずめもリュウと同じところへ、逝ける。
罪を犯さず、綺麗なまま、リュウの側へ。
引きずり込まれるような眠気が意識を蹂躙していく中で、すずめの脳裏に懐かしい兄の笑顔が現れた。