幸せの記憶
第1章 ☆幸せの記憶
◇ ◇ ◇
―――あれは子どもの頃の僕?
僕は……夢をみていた。
なんで夢だとわかるのかと問われたら、ここが夢の中だから……そう答えることしか出来ない。
僕の意識はふわりと宙に浮いていて、周りを見下ろしているようなそんな感じだったのだ。
眼下には子どもの頃の僕らしき少年の姿が見えていて、場所はさっきゴザを敷いたばかりの座敷なのだけれど、少しだけ様子が違っているような気がした。
その少年は文机に向かって一心不乱に書道の練習をしているのだが、書いている紙は書道用の半紙ではなく新聞紙だった。
新聞紙には書いている文字が読み取ることが難しい程、文字が書き重ねさられていて、裏表に練習したそれは、裏も表も真っ黒だった。
僕自身も新聞紙に練習することは無い訳じゃない。
でも新聞紙のインクの油分が筆には余り良くないため滅多にはやらないし、書道用の紙も練習用ならそんなに高価な訳でもなく、僕は新聞紙を真っ黒になるまで書いたことは無かった。