幸せの記憶
第1章 ☆幸せの記憶
『センセー、無視しないで下さいよ!』
『みつ、ウルサイから』
“みつ”と。今、少年は少女のことをそう呼んだよね?
みつというのは祖母の名前だった。
着ているものを良く見てみれば、少年は白いシャツに半ズボンと言う出立ちで、少女の着ているものは普段着らしき着物だった。
僕が子どもの頃にはいつも壁に掛っている電気屋のカレンダーも無く、祖父が書いた掛け軸も床の間には掛ってはいない。
さっき感じだ違和感は、多分・・・・僕が生きている時代とのギャップ。
良く見れば、毎日時刻を告げる柱時計も、見知っているそれよりは少し新しいような気がする
―――…。
―――もしかしてあれは若い頃の祖父母の姿?
そう気付いた直後、突然目の前が白い靄に霧に包まれて目にしていた二人の姿は霞んで見えなくなってしまう。
―――なんなんだ、一体。