
幸せの記憶
第1章 ☆幸せの記憶
それから何度も目まぐるしく時代は替わり、その度に違う年代の二人の姿を僕は目にした。
幼い二人の姿もあれば、年老いた割合最近の姿もあって。
大人になった祖父と祖母の、見ているこちらが気恥ずかしくなるような甘い場面や、意見を対立させている二人、落ち込んだ祖母にそっと寄り添う祖父の姿―――幼馴染みから恋人になり、やがて家族になった二人の様々な幸せな状景が、さかのぼったり、進んだりと、その順番、時代はバラバラなまま、僕の目の前を通り過ぎていく。
この夢はいったい僕を何処に連れていきたいんだろう。
これは誰かの夢?それとも誰かの記憶?
―――チリ……ン、チリリ…ン♪
祖父と祖母。二人の思い出の中で迷子になっていた僕の耳に微かに聞こえた涼やかな音が、眠りの森に迷いこんでいた僕の意識を覚醒させる。
簾越しに吹く優しい初夏の風を感じながら、僕はゆっくりと目を開けた。
「センセ?」
―――おばぁ、ちゃん?
僕はまだ夢を見ているのだろうか。
死んだはずの祖母――――それもさっき断片的な夢の中での若い姿の祖母の姿が、縁側に立っているのが目に入り、僕の頭は混乱する。
