好きって言わない!
第9章 水と油と翔と潤と猫。
A「お邪魔しまーす・・・」
松本の家に上がり込んだ俺たちは、少し緊張して座っていた。
シンプルだけど綺麗に片付けられたオシャレな部屋。
とても同年代の男子が住んでいる部屋とは思えなかった。
なんだか女子の部屋に来たみたいで落ち着かない。
N「お前・・・一人暮らしなの?」
M「そうだよ。」
ぶっきらぼうに答えて、キッチンの方へ行ってしまった松本。
そういえば、買い物帰りだったのかスーパーの袋を下げていた。
一人暮らしか・・・
高校生でそんな事できるなんて、さすが理事長の息子。
それよりも、松本がいない今がチャンスだ。
N「まーくん、マタタビよこせ。」
A「え?」
N「マタタビ!俺猫に好かれる特殊能力なんか持ってねーっての。
あいつがいないうちにマタタビ仕込んどかねーと嘘がバレるだろ。」
A「なるほどね。」
まーくんが持ってきたマタタビは粉末タイプだった。
よし、なおさら都合が良い。
ちょっと俺の体に付けときゃ猫が寄ってくるだろう。
A「どうする?振りかけちゃう?」
封を切ったまーくんが立ち上がって俺の頭にマタタビの袋を持ってきたので、慌てて止める。
N「ばか!頭から振りかけんなよ?!
膝とか猫が擦り寄りやすい場所だけで良いだろ!」
A「ああそっか、」
笑いながら座ろうとしたまーくんが、すぐ近くにあった猫の柄のクッションを踏んですっ転んだ。
A「わっ、」
N「ちょっとっ!」
S「うわっ!!!」
バタン!と俺に向かって倒れたまーくん。
両手を床について、まるで押し倒されたような体勢に一気に体が熱くなった。