好きって言わない!
第30章 台風ジェネレーション。
M side
シャツの袖を通すのに、こんな緊張した事はない。
シンプルな白いシャツ。
俺、似合ってないかも・・・
S「似合うじゃん。」
M「っ!!」
振り向けば、すっかり身支度を終えた櫻井がニッコリ笑って立っていた。
S「それ、オーダーメイドなんだけど。
俺らは背格好が似てるからな。
ピッタリだ。」
身ひとつで旅行へ連れて来られた俺は、約束通りこいつに服を借りた。
なんつーか・・・
何でこんな小っ恥ずかしい気分になるんだろう。
S「彼シャツだな。」
M「・・・・・。」
か、彼シャツ・・・
M「バカじゃねぇの!!」
S「冗談だろ。」
M「・・・・・・当たり前だ!!」
分かってるよ冗談くらい!!
クソ!!
S「もうチェックアウトの時間だ。
さっさと行くぞー。」
M「分かってるっての!」
俺は荷物なんて無いから楽チンなもんだ。
ミーコへのお土産も櫻井のバッグに詰め込んだし。
ミーコ元気かなぁ・・・
ドアまで来たところで櫻井がふと止まる。
こちらを振り返ると、ニヤリと笑った。
S「おいで。」
M「・・・・・。」
部屋を出る前に、キスっつーことか。
キザな櫻井のやることっぽい。
言われた通り櫻井の前まで歩いていくと、黙ったままジッと見つめた。
S「・・・昨日から、妙に素直だな。」
M「ペットだから。」
昨日思ったんだ。
あんな酷く抱かれても、甘えた声で情けなく謝られても、キスひとつで俺はこいつに夢中にさせられる。
ペットじゃん。
こいつに懐いてしまった、頭の悪いペットだよ。
じゃあ、それで良いかって思った。
どうせこの気持ちは報われないんだから、こいつが可愛がってくれるうちはペットでもなんでもなってやるって。
無理やり、そばにいてやるんだ。