好きって言わない!
第9章 水と油と翔と潤と猫。
S side
人当たりが良くて爽やかな笑顔は、さすがスポーツマン。
さぞモテるだろうと思うが、本人は全く自覚していないらしい。
幼馴染だと言う2人は、周囲を驚かせる程仲が良かった。
まーくん、にのちゃん、なんて恥ずかしい呼称もそうだが、何より恋人のような甘い雰囲気。
2人共、純粋なんだろう。
今までに出会ったことの無いタイプの人間だった。
2人と友達になりたいと思った。
副委員として目をつけただけだったのに、思いがけず面白い友達が2人も出来て俺は機嫌が良かったんだ。
それなのに。
あの松本潤とかいう派手な奴。
見るからに頭の悪そうな男だった。
理事長に甘やかされて育ったクソガキか・・・
あんな奴とつるんで得する事なんかなに一つないだろ。
むしろ損しかしない。
それなのに、あの2人は松本潤に興味を持っているようだ。
S「面白くない。」
バタン、と音を立てて参考書を閉じた。
冷めてしまった紅茶を飲む気にはなれず、もう片付けてしまおうと椅子から立ち上がったところで思い出した。
S「・・・ああ、紅茶淹れ直そうか?」
女の子を放ったらかしにしたままだった。
参ったな・・・すっかり存在を忘れていた。
少し拗ねている。
「・・・良い。今日は帰るね?
勉強の邪魔してごめんなさい。」
寂しそうに笑って、カバンを持って立ち上がる。
手に持ったままのスマホ。
俺が全く構わないからずっとスマホを弄ってたんだろう。
俺が勉強している間はいつもそうだった。
この子は勉強が苦手なんだ。
偏差値はさほど高くないが名のある名門女子校に通っていて、そこの上品な赤いリボンが付いた制服が俺は好きだった。
S「ゴメンね?」
そっと引き寄せておでこにキスをする。
上目遣いで甘えた顔をするので、唇にもキスをした。
「・・・今週の土曜日、会える?」
無理だ。
予定がある。