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第1章 ただいまの季節
A side
「ほったらかしにしちゃって、ごめんね?」
寂しかったでしょって、柔らかく笑う。
「いつもほったらかしじゃん。」
「拗ねないでよ。」
「拗ねてねーし。」
「しょうがないから、もっとぎゅって
してもいいよ。」
どっちが寂しかったんだか。
和だって甘えたかったんでしょ?
素直に言えばいいのにって思うけど、
そんな和も可愛くて素直に抱きしめた。
「ここ狭いから、ずっとこのままで
居られるね。」
「バカじゃないの…。」
口ではそう言ってるけど、前に回した俺の
腕をぎゅっと掴む。
「やっぱりここが落ち着くね。」
「うん…。
相葉さんは、本当に良かったの?
…後悔してない?」
さっきまでとうって変わって、
振り返った和が不安そうな瞳を向ける。
「後悔なんてしてないよ。
むしろ嬉しかったんだから。」
そう。ここに戻ってきたのは、紛れもなく
和の意思だった。
このアパートを出ようと提案したのは俺。
大学を卒業して就職するのを機に、
ふたりの職場に近いマンションに引っ越しを
しようと言った。
和もその提案に前向きで、話はすぐに進んだ。
引っ越し先のマンションは築5年で
駅から10分、近くにはコンビニ。
家賃は少しかかってもふたりなら無理なく
出せる金額だったし、ここよりずっと便利で
何も不自由はないと思ってた。
和も同じように思ってくれていると
思っていた。
和が泣いたあの日までは。