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第1章 ただいまの季節
A side
住んでから、1年と少し経った頃。
家に帰ると鍵は開いていたのに
リビングの電気は消えていた。
不思議に思って廊下を進んでドアを開けて
リビングの電気をつけてみても、和の
姿はない。
「和?」
名前を呼んでも返事はなくて、
心配になって電話をかけてみると
着信音が寝室の方から聞こえてきた。
そっと寝室のドアを開けてみると、
ベッドの上にもっこりと膨らむ塊。
「かずー…」
顔を覗きこんで、はっと息を呑んだ。
和の顔には、いくつもの涙の筋のあと。
自分の体を抱きしめるように
小さく丸め込んで眠る姿は悲しくて。
「和、和。」
優しく体を揺すると、ゆっくりと
瞳が開いていく。
その瞳が俺を捉えた瞬間、
和は驚いた顔をして、すぐに布団に
くるまってしまった。
「和?」
「…。」
「…泣いてたの?」
「…泣いてない。」
「何で泣いてたの?」
「…。」
「和。言ってくれないとー…」
「泣いてないって言ってるだろ!」
突然響いた鋭く大きな声に、体がビクッと
跳ね上がった。
感情的な和に動揺して、フリーズする俺。
「和ー…」
「…放っておいて。」
「そんなこと出来るわけないだろ!」
「ここ最近ずっと放ったらかしにしておいて、
こんな時だけそんなこと言うんだね。」
思いもしなかった和の言葉に、
ぐっと言葉がつまる。
「何も言えないんじゃん。
…もういいって。」
「全然良くないよ。」
「良くないならなんで…!」
布団の中から、かすかに鼻をすする音。
そして小さく震える体。
「和…。」
布団を捲ろうとすれば、抵抗を受けたけど
ぐっと力を込めれば泣いている和の顔。