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悪夢特捜ドリムバン

第1章 悪夢特捜ドリムバン

確かに給与条件は破格に好待遇だ。失業中の空にとっては大事なことである。

沙織は空を手招きして玲子たちから離れると小声で楓の心の傷について話した。
ちょっとした行き違いや誤解から大切な親友を傷つけるようなひどいことを言ってしまった。それが嘘だと謝って仲直りをすることもできないままに親友は不慮の事故で死んでしまった。

「そんな心の傷につけ込んで悪夢を植えつけて支配しようとするバグを許せない」
沙織は拳を握りしめる。

「そして、あなたには許せないバグと戦える力、ドリームがある」
玲子は諭すように言う。

悲しみの少女楓を見て空の心にも激しい闘志が燃えた。絶対に楓を守ってみせる。

「いつまでも楓ちゃんがそんなふうに悲しんでたら遥香ちゃんもつらいんじゃないかな・・きっと遥香ちゃんも楓ちゃんと仲直りをしたいと思ってたんじゃないかな」

空は楓を送りながら励ましの言葉をかけた。

「あたし遥香にひどいことを・・遥香はあたしのこと許してくれるかな?」
楓は不安な顔をする。

「きっと許してくれるって・・いや、仲直りをしたいって想いはお互いに同じなんじゃないかな」

空の笑顔を見ていると楓の顔が明るさを取り戻す。

「今度遥香の仏壇に謝って本当の気持ちを話してくるわ。こんなふうに思えるようになったのは空のおかげよ。ありがとう」

笑顔の楓はやっぱり可愛いし、楓には笑顔がよく似合う。

「今度は呼び捨てかよ。でも前向きになってよかった・・決心が変わらないうちに今から行こうか、遥香ちゃんのところへ。オレも一緒に行ってあげるから」

「ありがとう、空。一緒に行ってもらおうかな」

遥香は笑顔で空と腕を組む。空は思わずドギマギしてしまう。そんな空の様子を見て楓は無邪気に悪戯っぽく笑う。

「あの沙織さんってお姉さんには内緒にしておくからね、空」

「あの人とは今日会ったばかりだし、全然そんなんじゃないから・・」

沙織とは何でもないと強調するけど、顔を真っ赤にして全否定している様子からは沙織が気になっている様子が小学生でも分かるから、楓は楽しそうに笑う。

「そんなにムキになって否定すると好きだって言ってるようなものなのに、空ってば可愛いわね」
楓は本当に楽しそうに笑う。

「あのね~、オレはキミよりもかなり歳上なんだから呼び捨てはやめろ」

「じゃあ、おじちゃんの方がいい?」


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