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こじらせた初恋

第9章 誤解

二宮 side







そのあと、俺らはほとんど言葉と発さなかった。



お風呂入る?とか、飲み物飲む?とか。



最低限のことしか言わなかった。






大野さんの部屋の布団はシングルサイズが一組だった。



その上に俺らの小さい体を並べる。



智「あったかいね。外寒いからね」



ニ「ん。あったかい」




やっと出た会話らしい会話が部屋に響く。



俺は大野さんの横顔をみていた。



寝る気は無いのか、天井をまばたきを繰り返しながら見ている。



智「ふふ。なに?」



俺に見られてたことに気づいてコチラを見た。



その目にはうるうると水が貯まっていた。



俺は大野さんを引き寄せて、頭を抱えるように抱きしめた。



グスグスと鼻水をすする音が部屋に響き渡る。



胸元にまた、宝石の涙を感じていた。



智「いつのまに、こんなに弱くなったんだろ」



小さな声。



抱きしめる腕をさらに強めた。



俺にはそれくらいしかできなかった。





人は愛を知って弱くなる。




傷つけて傷つけられて、それでも愛を求めて。



逆さになったって叶わない夢を抱いてる。



大野さんの初恋は立ち並ぶ滝にのまれそうになっている。



俺は行き場のない心がふらふらと空に舞い、どこにも行きたくないと姥貝ている。







俺たちは初恋をこじらせている。








俺は最後まで、わかっていながら幼馴染が怒った理由を言えなかったんだ。






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