うちの社長が酷すぎる!
第8章 突然のこと
「ー稀乃」
「え…うわっびっくりした」
油断してたら、ふいに声をかけられた。
気づいたらヒカルはすぐ横にいて、いつのまにか台所に来ていたみたいだった。
「…なぁ、俺さ。やっぱりお前のこと諦めらんなくて」
「………へ、」
「でも彼氏いんの知ってるし、別れろとも言わないから。……抱かせろよ」
そう言って、作りかけのシチューの火を消される。
なにも言えずに固まったわたしを肩に担いで、歩き出す。
「や、やめ……っ」
「暴れんな。落とされたくねーだろ」
ヒカルの声はいつになく辛辣で冷たい。
その声に、恐怖で胸がいっぱいになった。尚更、動けなくなる。