うちの社長が酷すぎる!
第10章 見せかけの愛
こじんまりとした会社は、建築系の小さな会社だった。
うちの会社がコンサルティングするくらいだから、もっと大手の感じかと思ったら普通に自営業。
出してもらったコーヒーの底をぼーっと眺めながら、わたしはときたま仕事の話をする宝条社長の横顔を眺めた。
(…こうしてみると、やっぱり社長って素敵なんだな)
横顔の、なんていうか、顎のラインとかが理想的で、しゅっとしてて…
「ーおい、橘稀乃」
「うっひゃ」
ぽーっとしていると、社長がすぐ近くまで来ていた。
「仕事は終わりだ、行くぞ」
「え、もうですか?」
「今日は確認だけだ」
そうだったんだ、何してるのかとか全然わからなかった…
従業員におじぎで見送られて、わたしは社長の車の助手席に乗り込んだ
まだ慣れない社長の車の、少したばこの匂いが混ざった大人の匂い。
「悪い、煙草吸ってもいいか」
「あ、はいどうぞ…」
手馴れたように1本取り出して咥え、火をつける。
「……ふふ、なんか意外です」
「ん?」
「何も言わずに吸うのかと思いました、社長だから」
社長は、ふっと笑いを含めた息を吐いた
「隣にお前がいるんだから、気にするに決まってるだろ」