うちの社長が酷すぎる!
第10章 見せかけの愛
その日の仕事は本当にそれだけで、前みたいなことは起きなかった
何度も言うけど、期待してたわけじゃない。
でもあの日のことを完璧に忘れられたわけでもない。
もやもやした心持ちのまま、会社に向かってるであろう社長の車の助手席で窓の外を眺めた
「稀乃」
「あ、はい」
「そろそろキスしたい」
「は…は?」
真面目な顔で前を向いたまま、当たり前のように社長が言った。
「お前の彼氏が転勤してこようが俺には関係ない、だからいいだろ?」
「いやいやいやなんの根拠にもなってないです!!」
いつの間にか車はとまっていた。
どこかのコンビニの駐車場らしい。
「稀乃」
「ちょっ………だめですって!」
社長の手がわたしの太ももに触れる。
じわじわと上に上がってくる手を押し返そうとするも押し返しきれない。
「やめ…っ、」
顔を上げると、歯に甘い痛みが走った。
社長にキスされた。