うちの社長が酷すぎる!
第10章 見せかけの愛
コンビニの駐車場なんて、お店に入る人にも出る人にも見られる場所。
周りを気にせずキスされたことに驚きを隠せないまま、固まる。
「…………抵抗しないんだ?」
触れるだけのキスをやめて、社長は意地悪そうに言う。
あざとく首をかたむけわたしを見上げる姿に胸が小さく高鳴った。
「…っ調子にのらないでください!」
突き飛ばしてシートベルトを外す。
「わたし…歩いて会社戻ります」
「こっから?来た道分かるのかよ」
「…がんばります、では」
「ちょっと待てちょっと待て」
今にも降りようとするわたしを社長はわたしの腕を掴み止めた。
「…急にキスしたのは悪かったよ」
「………」
社長はずるい。
わたしには雄飛という彼氏がいて、でも処女を捧げた相手は社長で、少し社長に気持ちが傾いてしまってるわたしがいて。
そんなときにこんなキスをして、社長はずるい。
「………何も知らないくせに…っ」
気がつくと涙が目に溜まっていた。
「…わたし、最低だって分かってる、でも社長に愛された日が忘れられてないんですよ…っ」
「俺もだ」
さっきより落ち着いた社長の低い声に、俯いていた顔を上げる。
優しい顔をした社長が、わたしの手を取った。
「…稀乃、俺と付き合え」