うちの社長が酷すぎる!
第10章 見せかけの愛
そこからはもうずっと質問攻め。
雄飛は周りの女子社員からいろいろ言われていて、わたしも近くの社員から。
もうざわざわしすぎて、頭がごちゃごちゃしてきたとき。
「なんの騒ぎだ?」
いつの間にか入口に立っていた社長が一言。
それだけでオフィスは静かになった。
「橘稀乃、お前がなにかしたのか?」
「…!」
「違います!俺と稀乃が…っ」
反抗しようとする雄飛を手で制して、わたしは社長の前に出る。
社長の目は冷ややかで、さっきまでの雰囲気と違いすぎて背中に冷や汗がじわりと浮きでた。
「…はい、わたしの軽はずみな発言の結果です」
「そうか、気をつけろ」
社長はそれだけ言うと、ドアを荒々しく閉めた。
…社長は、多分、助けてくれた。
そう言い聞かせて振り向く。
「皆さん、すみませんでした。わたしと武藤君は転勤前から交際していてー…」
説明しながら、さっきの社長の冷ややかな表情を思い出していた。