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うちの社長が酷すぎる!

第10章 見せかけの愛


「ごめんな、稀乃」

仕事終わりの帰り道、雄飛がわたしにぽつりと告げた

「俺、社員さん達に囲まれながら宝条社長と出て行った稀乃のことずっと考えてて、なんかすげー不安になっちゃって…」
「うん、わたしも外回りのこと説明してなくてごめんね」

そう言うと、雄飛の表情はぱっと明るくなった。

「だよな!やっぱり、」

雄飛の顔から目をそらす。

「ー俺のせいじゃないよな!」

これは、付き合ってから知ったこと。
雄飛は、わたしが下手にでると明るくなり、優しくもなる。

「じゃあ、今から食事行こうか!」
「…うん」

そしてわたしは、付き合った当初から今までずっと下手に出ていた。
わたし達が付き合ってることを知ってる人の中で、このことを知ってる人は誰一人としていない。
どんなに仲の良い友達でも言わなかった。
言わなければ、雄飛とわたしはずっとお互い理想の恋人でいられたから。

(…いいの、暴力されてるわけじゃない。)

わたしは幸せなんだ。
雄飛といるから、幸せなんだ。

社長といても、幸せにはきっと…なれないんだって。

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