Everyday Love
第1章 Sparks Fly【白黄】
「お、遅れました!すみません!」
膝に手をついてハァハァと息を切らすのはテツ。
「おはよう」と一斉に皆がテツに挨拶をする。ただでさえ賑やかなデカルームがより一層賑やかになる。
その姿を見た瞬間ジャスミンの心はざわつき始める。
「なんだよ、遅かったじゃねーか」
「ナ、ナンセンス…目覚ましが…鳴らなかったんですよ…」
「わかるわかる!!あいつらときどきサボるよな!!」
「私のとこもー!」
とんちんかんな言い訳をするテツにバンとウメコが賛同する。
ドギーは呆れ顔だったがここ数日特にテツは激務が続いていたのを知っていたため「気をつけろよ」と言っただけでそれ以上は咎めなかった。
「はいはい、まぁ水でも飲んで落ち着いて」
「ありがとうございます、スワンさん…」
スワンからペットボトルを受け取るとテツがごく自然にジャスミンの隣に座った。
何で座るのよ…!
ジャスミンは心の中で声を荒らげバレないようにテツを睨んだ。
最近のジャスミンはテツに振り回されっぱなしだ。テツはジャスミンの心に大嵐を起こすのだ。グラグラと不安定な状態になる。
この感情が何かわからないほどジャスミンも子供ではない。
でも認めたくない。あまり人に愛されてこなかったジャスミンは愛に臆病なのだ。
「あ、おはようございますジャスミンさん」
ふとこちらを向き太陽のような笑顔を浮かべるテツ。
その瞬間、ジャスミンの心臓は激しく動き始める。このまま死んでしまうのでは?と言うほど活発に。
「おはようござんす、テツ殿」
ジャスミンは耐えられなくなってわざと茶化し目線を外して挨拶を返した。
挨拶に限らずテツにだけ違うリアクションを返すジャスミンに少なからず彼女の気持ちに気づいている面々はいた。
だが肝心のテツはさほど気にした様子もなくペットボトルの水を勢いよく飲んだ。
その姿をチラッと見る。また心臓が暴走している。
彼の笑顔がどうも駄目らしい。その端正な顔立ちと真っ直ぐな瞳で見つめられるとジャスミンはおかしくなりそうだった。