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今夜も君をオカズにする

第3章 文芸部Ⅱ

よくわからない取引材料をカバンにしまうと

中島らもの一冊を開く

くたびれた表紙

湿気を吸ってくしゃくしゃになってしまった本文

ぼうっと、読む

ぱらり

ぱらり

たまに似たような間隔で

たまに寄り添うような感覚で

一枚一枚

先輩と僕の本がめくられていく

二冊の文庫本が消費されていく

不思議な性癖の持ち主の女性と

時間を過ごす

でも、彼女がどうであれ

僕はこの空間にある種の居心地の良さを感じていた

ほとんどかすかに

グラウンドから掛け声が聞こえてくる

歓声が沸く

そんな中

忘れ去られたようなこの空間でゆっくり過ごすこの時間が

僕は好きだった

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