硝子の指輪
第3章 劣情と苛立ち
「あと…」
「ん?」
甘い香水が鼻につく。
「距離感が狭いっ!」
ぐいっと顔を押す。イケてる顔が台無しになるぐらい押す。
「いたたたっ!いいじゃん、可愛いし」
「話になってないんだけど?!」
うざいうざいうざいうざい…(以下省略)
謎の距離の近さといい、口調といい、この安心感のない臭いといい…。
「ちょーっと仕事しようなあ〜?」
先輩が笑顔で止めに入ってくれた。やっぱり好きだ、先輩…。
「は、はい…」
しょんぼりというよりは恐怖に怯えたような声に聞こえたけれど、私の眼中には先輩だけだったので一切分かっていなかった。
先輩の怖さが。