硝子の指輪
第3章 劣情と苛立ち
時間はどんどんと進み、定時を過ぎた頃だった。
「橋田ちゃん!今日一緒に駅まで帰ろ?」
「え、ヤダ」
「なーんで?!」
いや、そのままの意味でしかないよ。もう…これ以上疲れさせないでくれ。
「道島〜」
ここで先輩が登場。
ちょっぴりいつもより声が低い気がした。
そう言えば道島くんが今日来て先輩と全然話せてない…。道島くんがちゃんとしてくれないから、頭に浮かばないくらい暇がなかった。
「今日はさっさと帰って自分で勉強しよーな?」
「あ、はい…」
「あと、」
先輩が私の顔をちらっと見て笑った。
不意すぎてドキッとした。
「橋田ちゃんといつも一緒に帰ってるからな〜」
「わっ!!」
私の肩に腕を持たれかけ、耳の近くで声がする。内心ビクビクしてしまう。いい声が耳に伝わっていくせいで。