硝子の指輪
第1章 厚い唇
「は、橋田ちゃんももっと俺に否定しろよ!」
「あー、先輩だからー…そのー…」
彼は彼女の言葉に溜息を漏らす。
「これだから小悪魔はな…」
そうやって、誰でも同じこと言って口説いてるとでも思ってるの、先輩は。
さすがの私でも気分悪くなる。
奥さんが可哀想。
「私が誰とでも寝てると思ってるんですか?心外なんですけど!!」
「そ、そうじゃない、そうじゃないけどな?!」
「…」
「…怒ってる?」
「……別に」
「顔が怖いよ…」
そう言って私の頬を両手でホールドされる。猫の顔をぐねぐねするようなやり方を人間(私)にしてくる。私は猫と同じなのか…?
「先輩は女心分かってない」
「男だからな!」
……そうじゃないよ。
この人大丈夫かな?